そのまま前に進んでもベストな準備、ベストな結果が出せる気がしなかったし、1人のマジック人として生きていくにも、もやもやしたままでは良くないと思いました。
前回は、すぐに何が起こってしまったのかを明かすという目的が強く、今よりもずっと頭の中が混雑してしまっていた事もあり、起こってしまった事に対しての検討が足りていませんでした。
今回は、検討した上で何を考えたか、また、どうしていくのかという事を書きます。
GPフローレンスで失格裁定を受けた件について。(失格裁定翌日に書いたエントリです)
「残り時間が少ないのを確認した後、故意に時間稼ぎをしているように見えた」
という内容で失格裁定が出てしまった今回の件を、直接大きく関わっている要素で分けると、自分、ジャッジ、ルールの3つで出来ています。
[自分]
久々に起こった戦闘でどうブロックするかを真剣に考えていたらゲームを監視していたジャッジからスロープレイの警告を受けました。その時、1分近く考えてしまっていた気がするので納得でした。そして、更にラウンド後に呼び出され、ヘッドジャッジに「時計を見た後プレイするスピードが変わってなかった?」と言われたので正直に「はい、でもそれはブロックを考えていただけです。」と言い、どういう状況で考えていたのかまで説明しました。結果失格になり、その時はわけが分からないと思いました。
[ジャッジ]
とりあえずその場ではスロープレイの警告を出し、「時間を稼いでいたように見えた」為、プレーヤーの話を聞いた上で失格裁定を出しました。認識として、裁定が間違っていたとは思いません。裁定の内容がルール上おかしい事ではなかったし、ヘッドジャッジの裁定が絶対だという事により、大きいトーナメントが成立しています。でももちろん、悪い事をしてない人を捕まえてしまうのは良くない事だし、悪い事をしている人を逃してしまうのも良くない事です。しかし、その判断はとても難しいので、各状況に対応するルールがあると思っています。
[ルール]
真実が見えにくいケースなので、明らかでない場合はゲームロスという基準があっても良いし、遅延行為でDQかスロープレイで警告しか選択肢がないなら、もっとゲーム状況を参照したり、プレーヤーに何を考えていたのか話を詳しく聞く等あっても良いと個人的には思いますが、それは少なくとも今回の件には全く関係のないものです。例外もあるでしょうが、基本的にはプレーヤーもジャッジもそのトーナメントに使われる「現在のルール」に従うべきだと考えているからです。
以上を踏まえると、自分の知っている事実「時間稼ぎなんてしていなかった」と話した後でも「残り時間が少ないのを確認した後、故意に時間稼ぎをしているように見えた」とジャッジに思われたままだった場合、やはりどうしようもなかったわけです。
まず、その時自分がどうにか出来たかを考えると、どうすれば誤解が解けたんだろうというところに行きつきます。悪い事をしたわけじゃないから話せば分かってくれるだろうという油断と、2人のハイレベルジャッジに疑われてしまっているというプレッシャーが重なり明らかに、時間稼ぎでなかった事を分かってもらう為の最善を尽くせてはいなかったと思いました。
※新たな誤解がないように書いておきますが、ジャッジ達はなるべく余計なプレッシャーを与えないように丁寧に接してくれていました。
最初のフルアタックだったので考えていただけ、時間が終わってから早くなったのは場が片付いて簡単になったから自然なものという事は当然説明しました。しかし、「それは確かだったけどゲームの状況は裁定にあまり関係ない」「時計を見た後プレイが遅くなったのは事実」「必要がないのに2回墓地を見た」「この状況は誰であろうとDQを出さざるをえない」と言われ、そこで少し心が引いてしまい墓地確認に関しては「考える為に行った」としか言えていませんでした。
今思えば、油断やプレッシャー等をそれこそ顔でも叩いて取り払い、臆せず、より詳細な状況、思考の流れを説明するべきでした。
その中でも特に、「必要がないのに2回墓地を見た」に対しては墓地を見た理由まで出すべきだったと思います。
除去を打たれ、攻撃宣言前に《転倒の磁石/Tumble Magnet(SOM)》で1体タップした後、《マイア鍛冶/Myrsmith(SOM)》1体残してのフルアタックを受け特に考えたのは、こちらのマナマイアを次ターン以降マイア鍛冶の止めに使うか、ここで複数いる相手のマイアトークンのひとつと相打ちしてしまうかの2択でした。その際、次のターン以降マイア鍛冶を止めれるカードと、それ以上の効果をもたらすカードがどれぐらい残っているかという情報を明確にする為、長いゲームで貯まった墓地を確認したのですが、そういうところまでしっかり言ったほうが良かったかもしれません。
しかし、誤解をうまく解けなかった事について、僕は自分を責めない事にします。
この時の自分にいくら文句を言ったところでGPフローレンスは帰って来ない。そして、僕は誤解を解くプロではないし、こんな事が再び起こる可能性は低いし、疑われてしまわないように、より健全にやっていかなくてはならないからです。
よって今度は「疑われないように」「より健全に」やっていくにはどうすれば良いかという事に視点で振り返りました。
まず、墓地を確認したのが1回ではなく、2回だったのは本当に良くない行為でした。
2回墓地を見た事が時間稼ぎだという印象を高めてしまったのは事実です。
確認して、考えて、また確認して考えたり、確認しながら考えたりするのは良くない。
それを対策するには「考えて」→「必要な事があれば確認して」→「必要があればまた考えて」→「決める」というように、考える時の流れが決まっているほうが良いだろうと考えました。残念ながら10年以上やってきたにも関わらず、今までそういうところには全く注目できていませんでした。もちろん、自分の思考順というものは自然に身に付いたものがあるにはあるのでしょうが、本人がよく理解していないようなレベルです。スポーツで例えるなら今までぐちゃぐちゃなフォームでスイングしていたようなもので、プレイが遅い理由が分かってきました。
スロープレイの警告を複数回受けているという部分についても正直なところ、数多くのプレミアイベントに参加している為ある程度は仕方がないと思っていた節がありますが、他のサーキットプロに聞いてみると相対的に見ても凄く多かったので、問題に感じました。
自分は「頭の回転が遅い」か「完全なプレイを求め過ぎ」もしくはその両方である事は大分理解できたので、そういった要素を持ちながらうまくやっていくにはスムーズに解答を出す為の介入が必要であるという事は間違いないだろうと思います。今後は悪印象となってしまうような動作が少なくなるように、また、普段から早くプレイできるように状況に応じた思考のフォームづくりを意識してやっていきたいと思います。
もちろん、本番で考える量が減るように準備段階で可能な限り頑張る事は大前提ですが。
また、これは近年すでに気を使い始めている事なのですが、残り時間が少なくならないように、考える以外はできるだけ時間を使わないようにしようと思っています。「余計な時間を減らす」とも言えます。例を挙げると、ペアリングが出たらなるべく早くテーブルについて準備する、先手後手のサイコロは引き分けになりにくい20面体を使い時間を短縮(引き分けは楽しいけど我慢)、ライフを書く紙とペンは自分が早く書きやすいもののほうが良い、カードに置くカウンターは転がっていきにくい6面体を使う等、色々時間を短縮できる部分はあります。こういった事を、今まで以上に意識してやっていきたい。しっかり意識する為に近日、時間を短縮する為の項目別リストをつくります。
その他も、出来る事を探してやっていきたい。
今回の一番の原因になっているプレイスピードが早くなるよう、そして、なるべく残り時間が少なくならないように頑張っていきます。
最後に、この件に関して僕が感じた事や考えを書きます。
まず、僕は今回のこの裁定を受け入れています。僕は当然イカサマ師ではないし、イカサマもしていないけど、イカサマの一種「時間稼ぎ」の扱いで失格になってしまった。フェアにやるという意識でやっていてもこういう事が起こってしまったという現実を受け入れます。仮に裁定に文句を言ってもGPフローレンスは帰って来るわけじゃないし、そもそも仕組み上おかしい事は起きていないと認識しているので。ルールの改善等、今後のマジックがより良くなっていく事を切に願います。
その上で、今回の件で僕が被害者だという事に変わりはないけど、間接的に僕にも非あったのは明確。普段からプレイが遅い事が頻繁にある状態のままでいたのが本当に良くなかったと思います。今回、もし自分のプレイが早ければ結果として何も起こっていませんでした。
今回の事で沢山の人をがっかりさせてしまったし、沢山の人に迷惑をかけてしまいました。
その人達には本当に申し訳なく思っています。
損失は大きいですが、この出来事を真摯に受け止め、頑張っていくしかないと思っています。
この突然やってきた絶望的な出来事のせいで、理不尽だと思って一瞬マジックに対してネガティブな感情が生まれてしまいました。しかしそれは一瞬で過ぎ去り、結果としてマジックを愛する気持ちは全然変わっていませんでした。本調子ではないものの、すぐに前向きになれました。この愛はちょっと大きすぎるんだと思います。
僕は今まで世界中でマジックをしてきて、本当に多くの人達と知り合ってきました。世界で見てもトップクラスにマジックの素晴らしさを知っていると思います。
だからこそ、僕は今後もプロプレーヤーとして様々な活躍をし、もっともっと沢山の人を喜ばせ、自分も喜びながら、マジックが盛り上がる為の力になりたいし、晴れる屋のリーダーとしても、仲間や関わる人達と一緒にどんどんマジック界のハッピーを拡大させていきたい。
マジック界の皆様、改めてご挨拶をさせて下さい。
マジック人齋藤友晴は今回の壁を乗り越え、更に強い決意、高い意識を持って頑張っていきます。
まだまだ未熟者ですがこれからも宜しくお願い致します。
2010年12月1日 齋藤友晴
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テーマ:Magic:The Gathering - ジャンル:ゲーム